木版染め・型染め

日本の伝統文化である着物の染色技法には様々な方法があります。
「西の友禅」に相対し「東の小紋」と言われるように、型染めは江戸に代表される伝統技法として息づいてきました。

当工房では「型染め」はもちろん、日本で数少ない「木版染め」の技法を使った作品を作り続けています。

■木版染め ~歴史に残る染色技法~

長い型染めの歴史の中でも最も異彩を放つ技法であると同時に日本の型染めの起原とされていることはあまり知られておりません。

江戸の伝統技法である「木版染め」は大変特殊な技法で、著名なものでは江戸期の鍋島更紗などがあります。古くはインド等で始まった伝統染め技法といわれています。

多大な時間と手間を要することから、今ではこの「木版染め」を手がけている染色家は極めて少なく、残念ながらこの「木版染め」によって染められた作品やその技法は、一般的にあまり知られていないのが現状です。

 

【木版染めの技法】

この木版染めがひときわ異彩を放つのは、使用するその「型」にあります。

和紙でできた型紙を使用する現在の型染めと違い「木版染め」は、ホウやエゾツゲなどの3~10cmの小さな木片に型彫りを配した様々な柄の木版を、一つ一つ直接生地に押し染めるというシンプルではありますが、大変な手間と時間を要する技法であり、木の持つ柔らかさと染め手の温もり生地に直に伝わる事で得られる染め上がりは、他の技法では得ることの出来ない独特の味わいと優しさがあります。 

 

通常の型染めは数十センチの型紙を送り星という目印でつなぎ合わせて染色を施すのに対し、木版染めはわずか数センチの版木による型置きを送り星の目印なく、数十回以上繰り返し丹念に染め上げていきます。

 

現在その大変な手間から、この「木版染め」を手掛ける染色作家はほとんどおりませんが、染色界全体の歴史の中にあっても大変珍しく貴重な技法として、当工房ではその伝統を守っております。

■型染め

日本の伝統的染色技法である型染めには様々な手法があります。

数十センチの伊勢和紙から彫り出された1枚の型紙を使い、何メートルもある反物を染めていく技術は、年々その技術者が減り、機械によるプリントやシルクスクリーン等に取って代わられつつあります。

当工房の「手差し型染め」は沖縄の琉球紅型染めとほぼ同じ手法を用いておりますが、この紅型染めは江戸の染色文化の中でも、江戸紅型染めや絵型染めなどど呼ばれ、その歴史も大変古く、沖縄独特の風土や歴史から原色が多様される琉球紅型染めとは対極的に、渋みや粋を好む江戸の人々に合わせた中間色とモダンな柄がこの「手差し型染め」の特徴です。